ストックフォトとインボイス制度
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先日、「恋するインボイス」がYahoo!のトレンドに入っていましたね。
2月にも日本出版者協議会が「インボイス制度(適格請求書等保存方式)に反対する」との声明を発表したりと、ちょくちょく話題になっています。
せっかくなのでストックフォトとインボイス制度について考えてみました。
インボイス制度とは
インボイス制度って何?
インボイス制度は事業を営む個人や法人の消費税にかかわるもので、2023年10月1日から始まる予定の制度です。
国税庁の説明は以下の通り。
適格請求書(インボイス)とは、 売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。 具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
~以下略~
引用元:国税庁『インボイス制度の概要』(2022.5.28参照)
URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm
請求書を発行するときに税込み金額をどーんとまとめて記載じゃなくて、税率がどうとか、消費税がいくらとか決められた項目についてきちんと細かく記載した請求書を「適格」としますよってことです。
その適格請求書のことをインボイスと呼ぶってことですね。
正直、これだけを見ると請求書を細かく書くってだけなんですが、問題は受け取った請求書がインボイスかそうじゃないかで納める消費税が大きく変わってしまうことなんです。
消費税とインボイス
普段、私たちが買い物をして支払う消費税は企業が預かり国に納税しています。
例えば100円のものを買うと110円支払いますよね。その商品の仕入値が55円だったとします。
企業は受け取った消費税の10円から仕入れる時に支払った消費税5円を差し引いた5円を納税することになっています。
ところが、企業が仕入れた時の請求書がインボイスではなかった場合、仕入れる時に支払った消費税5円を差し引くことができなくなります。
企業は客から10円の消費税を受け取って、仕入先に5円の消費税を支払ったのに、国に10円を納税しないといけないというわけです。
それなら、仕入先にインボイスにしてもらえば良いじゃん!って気がしますが、これがまた問題なんです。
何が問題かと言うとインボイスに必要な「登録番号」。
この番号、課税事業者じゃないと発行されません。
課税事業者と免税事業者
さっき、客が支払った消費税は企業から国に納税されますよって書いたんですが、これは企業や仕入先など消費税を受け取ったところが課税事業者だった場合の話です。
消費税を受け取ったところ(仮にAとします)が免税事業者だった場合は納税しなくても良いので客が支払った消費税はそのままAが受け取ることになります。
さっきの例だと企業が免税事業者だった場合、売上と仕入の消費税を差し引きして残った5円を納税せずに企業が受け取るってことですね。
税金が利益になるので「益税」と呼ばれています。
それならみんな免税事業者になりたいところですが、もちろん基準があります。
免税事業者の基準はザックリ簡単に言うと売上1,000万円以下であること。
売上が少ないから消費税の納税は免除してあげるよってことです。
インボイス制度の影響
免税事業者は登録番号がないのでインボイスを発行することができません。
企業が課税事業者、仕入先が免税事業者の場合に問題が発生します。
先に説明した通り、企業にとっては仕入先がインボイスを発行してくれないと仕入れる時に支払った消費税分を差し引くことができないのでその分負担が増えます。
そこで企業がとる行動は次の4つぐらいかと。
①は企業の負担が増える=企業の利益が減るってことなので積極的に採用されることはないですよね。
②は消費税が上がるときなんかでも問題になる方法ですね。
増税後も店頭価格は据え置きにして、その分、仕入価格を抑えて利益は確保する。仕入価格を抑えられた仕入先や下請けの売上が減るってやつです。
③は免税事業者に課税事業者になってくださいってことですね。
実は売上1,000万以下でも届出さえ出せば課税事業者にはなれます。だから課税事業者になってインボイスで請求してねってことですね。
ただ、そもそも売上が少ないから免税にしてもらってるのに、課税事業者になると少ない売上の中から消費税を納税しなければならないので、仕入先にとっては負担が増えます。
本来、納税するべき消費税なんだから負担とか言わずに納税しなさいと言われればそれまでですが、理由はどうあれ利益が減ることになるので仕入先にとっては辛いですよね。
④はあれこれ言わなくてもインボイスを出してくれるところに仕入先を変えてしまうってことなので仕入先にとっては大打撃です。
売上がそっくりなくなるってことですからね。
と、ここまで見て①以外は全部仕入先にとって負担が増えることになります。
これがインボイス反対の声が上がったりしている理由の一つです。
立場的にも弱いフリーランスや個人事業主はもろに影響を受けますし。
最近では副業解禁ってことで会社員しながら自分で事業を始めた人もいると思うので、完全なフリーランスとかじゃなくても影響が出ますね。
他にも経理処理が面倒になるとか、インボイス対応のシステムに変えなきゃいけないとかいろいろ理由はありますがその辺は今日のところは割愛します。
ストックフォトとインボイス制度
ここまでお客さんと企業と仕入先で説明してきました。
これをストックフォトに置き換えてみるとお客さん=ダウンロードする人、企業=ストックフォトサイト、仕入先=クリエイターになります。
そう、負担が増える仕入先=私たちクリエイターなんですよ!
ストックフォトサイトには何が起こる?
PIXTAがわかりやすいのでここからはPIXTAを例に話しますね。
PIXTAの場合は1クレジット=110円です。これ、増税前は1クレジット=108円だったので100円+消費税が報酬と言うことになります。
例えば単品Sサイズの価格は500円+消費税なのでダウンロードする人は550円をPIXTAに支払います。
そしてPIXTAはクリエイターに報酬を支払います。ちょっと計算が面倒なのでこの場合の報酬は1クレジット=110円とします。
クリエイターがインボイスを発行できる場合はPIXTAは受け取った消費税50円-支払った消費税10円=40円を納税します。
でもクリエイターがインボイスを発行できない場合、PIXTAは受け取った消費税50円=50円を納税しなければなりません。クリエイターに支払った消費税10円はPIXTAが余分に出費した形になります。
たかが10円、されど10円。塵も積もればとんでもない金額です。
ストックフォトサイトはどう動く?
インボイスが発行されない場合の負担をPIXTAが全額かぶるのか?と考えるとそうはならない気がするんですよね。
ただ、クリエイター全員に「登録番号」の提出を義務付けるのも現実的ではない気がしています。
ストックフォトのクリエイターで課税事業者の人ってそう多くはないと思うんです。あくまでも私の予想ですけど。
ストックフォトって質の良い写真をどれだけ多く提供できるかってことがサイトとしても重要だと思うので、大部分のクリエイターを締め出すことになる「登録番号」の提出義務化はしないんじゃないかと。
落としどころとしては報酬の改定で対応かなと思います。
「登録番号」を提出したかどうかで報酬を分ける可能性や、PIXTA側に増える負担分を加味して全体的な報酬引き下げもありうるかなと。
販売価格を上げることも可能性としてはありますが、客に他のサイトに逃げられると元も子もないので販売価格の値上げよりも報酬の値下げの方が現実的な気はします。
「登録番号」を提出したクリエイターの写真を優先的に検索結果に表示するってこともあるかもしれませんね。
今後、クリエイターはどう動く?
結局のところクリエイターは課税事業者になるか、免税事業者を続けるかの2択だと思います。
面倒だし儲からないならストックフォトのクリエイターをやめてしまうって選択肢もあるので、それを入れれば3択ですね。
今のところ各ストックフォトサイトともインボイス制度に対してどう動くか公表はしてないみたいです。みんな様子見ってことなんですかね?
各ストックフォトサイトがどう動くかわからないので、私はさてどうするかなぁ?って感じですね。
ここまであれこれと書いてきましたが、あくまで私が予想していることなので全然的外れなことかもしれません。
ただ、どうなっていくのか知らん顔はできないのかなと思うので、頭の片隅に置いておこうと思います。